ストラテジーとインサイト

アジアでのセールスにおける経済的逆風を乗り切るには

アジアでのセールスにおける経済的逆風を乗り切るには

注:本記事は(2023年5月24日)に公開された(How to Navigate Economic Headwinds When Selling in Asia)を翻訳して公開したものです。

アジア各地で30年間テクノロジー業界に携わってきた中で、私はこれらの市場の浮き沈みを数多く体験してきました。少し前に、米国とヨーロッパのソフトウェア企業がアジアへの進出を成功させるために何ができるかについてブログ記事を書きました。現在は、米国がインフレ率の上昇と景気後退の間で揺れ動き、ウクライナでの戦争は2年目に入っています。また、ほとんどの業界で新型コロナウイルスの影響が依然として感じられています。今こそ、これらの市場が直面している課題と、テクノロジー企業がどのように役立てるかについての記事を書くべきときだと言えるでしょう。

米国とヨーロッパの経済の動向は、常にアジアにも波及するものですが、その影響はすべての国で一様に感じられるわけではありません。オーストラリアやニュージーランドなどの英語圏の国では、業界ニュースを欧米のメディアに頼っています。米国でのインフレでの闘いは、アジアのそれらの地域における保守主義の先駆けとなる可能性があります。テクノロジーの購入が止まるわけではありませんが、顧客は取引を成立させる前にROIを確認するためにより多くの時間と労力を費やすことになります。実際の経済的な問題によるものであるかどうかに関係なく、パニックや不安感が生まれ、それが意思決定や投資に影響します。

日本や韓国などのアジアの大国では、欧米で起きていることの影響が及びにくいため、今のところビジネスの状況に変化はありません。サプライチェーンと物流への影響を受けない国はありませんが、これらの国ではある程度自力で対処することができています。インドではクラウドネイティブの新興企業が急増していますが、キャッシュフローの減速が現在の成長に逆行しています。

ノイズが増幅する中でアジアにおけるサービスを提供する最善の方法とは

現実で、あるいは推測において経済的逆風が現れ始めたとき、アジアでのセールスを成功させるためにできることはたくさんあります。セールス担当幹部とそのチームには、好況時、不確実な時期、そして困難な時期のすべての経済の波に対してこれらのヒントを参考にしていただきたいと思います。

製品のセールスからソリューションのセールスへのシフト

顧客が世界的な出来事の影響を感じている場合は、その顧客の痛みを感じ、解決策を見つけます。ここでは、収益の低下、利益率の低下、または効率性の不足などが考えられます。予算が限られていると、顧客は本能的にブレーキを踏み、プロジェクトを棚上げしたり、従業員を解雇したりすることもあります。しかし、収益の拡大とコスト削減につながるような、ほぼ即時的なインパクトのある新しいプロセスやビジネスチャンスを生み出す方法もあります。セールス担当者にソリューションセールスのコツを教えましょう。それは、顧客と協力し、顧客の問題点を理解し、どの問題を解決できるかを判断し、顧客にとってそれがどれだけのメリットがあるかを示すことです。景気が上向きの場合でも、長い目で見れば、製品の機能よりもビジネス価値を売り込む方が良いと言えます。

しかし、誰もがソリューションのセールスだと主張するため、注意が必要です。尋ねるべき質問は、「それによって顧客の問題点は解決するか」ということです。自分たちテクノロジーがそれらの問題を解消するものであることを確認し、そのメッセージをCIOやCEOに伝えることがより重要です。Snowflakeにとって重要なのは、顧客がデータにアクセスし、それを管理、共有、収益化するための最適な方法を見つけることです。

テクノロジーで実現できる以上の価値を提供

Snowflakeには、顧客が使用している現在のテクノロジーを調べるバリューエンジニアリングチームがいます。評価対象は、コストや提供内容、制限事項、ビジネスへの影響などです。顧客がビジネスアナリティクスを実行するのに1週間かかるとして、Snowflakeではシングル・ソース・オブ・トゥルース(信頼できる唯一の情報源)によって数時間以内にリアルタイム分析を実現できるとすれば、顧客にとってそれが価値のある代替手段となります。経済的メリットとクラウドで利用できるデータインサイトに加えて、Exadata、Cloudera、Teradataなどのレガシーシステムをクラウドプラットフォームに移行すると、多くの場合は大幅なコスト削減とROIが実現します。

それによって、非常に確実な顧客特有の機会が得られることになります。これは、コストの削減、ROIの向上、データに裏付けられた迅速な意思決定を実現し、競合他社を追い抜くのに役立つものです。その間に、マクロ経済的不安は、お金の節約、ビジネスの成長、市場シェアの拡大、あるいはこれらのすべての現実に隠れて目立たないものとなります。

参入と拡大

好況時はセールスに苦労することはありません。本当に人気があるテクノロジーなら誰もがそれを欲しがります。そのため、市場が停滞しているときと比べて、注文を受けるのはそれほど難しくありません。しかし、優れたセールス担当社はそこで留まることをしません。彼らは、お客様の課題や機会が、ソフトウェアを導入する単一の部門やビジネスユニットだけにあるわけではないことを知っています。彼らは最初の意思決定者と強固な関係を築き、信頼を維持し、他のチームやより高いレベルの意思決定者とのつながりを構築していきます。これは、お客様のその他のユースケースに対応し、最終的にはより多くのビジネス価値を提供するための最低要件です。

次の行動を起こす

これはセールスというより製品開発に関わりの深い部分です。多くのテクノロジー企業が最初の行動を起こしています。企業が新しいテクノロジーを開発すると、顧客は「大変素晴らしい、それを買いましょう」と言うでしょう。そして、ソフトウェアプロバイダーはこの成長期を迎え、多くのプロバイダーは次の行動を起こすことなくピークを迎えます。5年~10年は成長していけるとしても、その成長は必然的に鈍化し、買収されたり他の企業に取って代わられたりすることになります。

Snowflakeは、サービスとしてのデータウェアハウスから、データウェアハウスだけでなく、データエンジニアリング、データシェアリング、データアプリ開発、データレイクなどを実現するデータクラウドプラットフォームへと進化し、Snowflake上でアプリを開発して実行するといった新しいユースケースを実現してきました。自分たちが最初に達成したことであっても、競合他社に追いつかれることになります。追いつかれたときには、他社と差別化できる次の大きな成果をあげている必要があります。そして常に、次の展開を知らせていくようにしましょう。「今ご購入いただいても、ソリューションロードマップによってこの決定が将来も保証される」ということを伝えます。その意味で、常に進化していくということです。

カエルではなくウサギになる

私の前の会社では、お客様のCEOと面談できるまでに3~4年かかりました。最初に会うのは、開発者やテクニカルユーザーでした。彼らに商品を気に入ってもらえれば、「これはかなり良いです」とマネージャーに報告してもらえます。そうすれば、ディレクターレベルで話題に上り、より大きな取引につながる可能性があります。1年後には、さらに大きなプロジェクトが立ち上がり、多くの価値が生まれ、CIOと連絡が取れるようになる、といった流れでした。

一方Snowflakeでは、お客様が当社のテクノロジーを使用する前、あるいは私たちといくつかの小さなプロジェクトを実行しただけで、CEO、CIO、CFOと連絡を取るようになっています。そして突然、10億ドルの予算を持つ主要な意思決定者と面談することになります。しかし、それは有機的な段階を経て、大規模な戦略的エンゲージメントに至ったわけではありません。プロセスの最終段階まで一息でたどり着いた形となります。

このような状況にあるお客様は、多くの場合、「このコンセプトとデータクラウドが大変気に入った。米国のすべての顧客に対して御社がどのようなことを行っているのか知りたい。すぐに実現したい」といったことを言います。その熱意は分かりますが、私たちとしては、一旦落ち着いてそれを実現するために必要な段階を踏むよう助言しています。つまり、センターオブエクセレンスを構築し、役員らのスポンサーシップを獲得し、まずいくつかの小規模なプロジェクトを実施するということです。

全体として、まずソリューションの価値を社内で体験し、小規模なプロジェクトの成功を通じて本格的な勢いをつけてから、その非常に大きなイニシアチブに取り組む必要があります。これは、顧客とソフトウェア会社が長期的に良好な関係を築くための最良の方法です。早い段階から価値を示し、それを土台として顧客とのパートナーシップを拡充させていきましょう。

消費モデルの提供

ほとんどのSaaS企業は、製品をサブスクリプションとして販売しています。複数年契約に割引を適用することで、顧客による安定的かつ予測可能な支出を確保することができます。しかし、経済状況は決して安定的なものではありません。逆風となり、顧客が節約を望んだとしてもサブスクリプションモデルではそれを実現できません。

Snowflakeでは、お客様からのより大きなコミットメントに対して割引を提供することもありますが、従量課金のみの消費モデルも提供しています。お客様がクレジットを使用しなくても、クレジットが失われることはなく、使用するまで請求されることもありません。SaaS企業の成功という点ではこれは一見間違っているように思えるかもしれませんが、サブスクリプションモデルでは実現できない方法で顧客との関係を強化することができます。

Snowflakeでは、このモデルが実際に長期的な信頼と事業取引の強化につながることが分かりました。それには、セールス担当者は販売後も長きにわたって顧客と関わり、新しいデータワークロードやデータによる新しい収益機会の特定にSnowflakeを使用することで得られる価値を顧客に理解していただくよう努める必要があります。顧客が購入したクレジットを使用するまで、収益は計上されません。このアプローチにより、「シェルフウェア」の問題が回避され、セールスチームとSEチームは顧客の成功に集中することができます。多くのテクノロジー企業では、独立した「カスタマーサクセス」チームを設けていますが、私たちにはそのようなチームはありません。Snowflake社内での役割に関係なく、私たちが行うことはすべて、顧客に満足感を与えることであり、それが自然と消費につながっていきます。

既成概念を破壊するテクノロジーのセールス

何十年も前から存在する主要なテクノロジー分野に挑むソリューションを販売することは、チャンスであると同時に大きな挑戦でもあります。Snowflakeのクラウドデータプラットフォームは、2014年に一般公開されました。当時、私たちは市場開拓の取り組みを単一のワークロード、つまりデータウェアハウスに向けていました。私たちが提供する製品のほとんどすべてが、それまでの30~40年間の従来のデータウェアハウスの運営方法とは異なっていました。

当初、お客様は私たちのセールスチームを信じていませんでした。信じてもらえるようになり、Snowflakeを購入していただいたとき、お客様はSnowflakeの前に使用していた従来のデータウェアハウスと同じ方法でSnowflakeを使おうとしました。自社の製品の素晴らしさが分かっているとしても、既成概念を破壊するようなテクノロジーを提示するならば、従来のセールス方法では不十分です。製品がどのようにそれを実現するのかを説明する前に、まず何ができるのかという点を見込み客に分かっていただく必要があります。そうでなければ、どれほど優れたテクノロジーであっても、見込み客に受け入れてもらえないのは当然のことです。

まずは調査からスタート

ソフトウェア企業は、個々の顧客に留まらず、世界的な逆風の中で成長を続けている新たな市場に参入することができます。ある国の人口増加、国内総生産(GDP)、自分の会社が提供するテクノロジーへの関心の高まりなどに目を向けてみましょう。Snowflakeは、他のクラウドベンダーの動向を注視しています。有望な新しい地域におけるそのベンダーの規模はどのくらいか、スタッフが現地にいるか、収益はどのくらいか、といったことを調査します。そのようにして、クラウド市場の規模を把握してから、通常はアンカーカスタマーを探します。

多くの場合、実際に拠点を設立する前に、それらの国にリモートで、あるいはパートナーを通じてセールスを行うことになります。次に、私たちは通常、いわゆるアンカーカスタマー、つまり大規模な早期導入者を探します。つまり、全体的な分析、市場ポテンシャル、パイプライン、他のクラウドベンダーのプレゼンスと成功、およびアンカーカスタマーなど、さまざまな要素が絡み合っているということです。Snowflakeでは、アジアでの新規オフィス開設やSnowflakeのホスティングを行う前に、これらすべてのデータを検討します。データを信じ、先に進むのです。

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